「先生、今の時代ってスマホがあれば子供がどこにいるかすぐ分かっちゃうじゃないですか。忘れ物防止タグとか。あれ、そもそもどんな仕組みなんですか?」
そんな素朴な疑問から、今日の理科の時間は「宇宙規模の算数」の話になりました。
■ステップ1:宇宙からの「超精密な時報」を受け取る
先生:いい質問だね。まず大事なのは、GPS端末(スマホとか)は「電波を送っている」んじゃなくて「受け取っている」だけなんだってこと。
生徒:えっ? 送ってないんですか?
先生:そう。宇宙にはGPS衛星が飛んでいて、そこには数億円もする「原子時計」っていう、100万年に1秒も狂わない超すごい時計が積んであるんだ。その衛星が「私は〇号機です。今は〇時〇分〇秒〇〇〇です!」っていう時報を、常に地上に送り続けているんだよ。
生徒:時報……? それでどうして場所がわかるんですか?
先生:光の速さを計算に使うんだ。衛星が『何時何分何秒に送ったか』という情報を電波に乗せて送ってくれるので、自分の時計で受け取った時刻と比較することで、電波が飛んできた時間(経過時間)がわかる。その時間×光の速さ=距離、という計算をしているんだ
■ステップ2:なぜ衛星は「3つ」必要なのか?(格闘編)
ここからが、僕たちの格闘の始まりでした。
生徒:でも先生、距離がわかっても、どの方向にいるかわからなくないですか?
先生:その通り! GPS衛星1個だけだと、自分はその衛星を中心とした「球(ボール)」の表面のどこかにいることしかわからない。無限に可能性があるんだ。
生徒:じゃあ、2個あったら?
先生:2つのシャボン玉が重なったところを想像してごらん。その境界線は「円(輪っか)」になるよね。自分はその円のどこかにいる。
生徒:あ! まだ円(線)の上だから、どこにいるか決まらないんだ。
先生:そう。そこで3つ目の衛星だ。その「円(フラフープ)」に、3つ目の球の表面がガツンと重なる。そうすると……。

生徒:……あ! わかった! フラフープ(円周)を突き抜ける場所は「2点」だけだ!
先生:正解! 納得したね。その2点のうち、1点は宇宙の彼方、もう1点は地球の表面。だから「今ここにいる」って特定できるんだ。
■ステップ3:【核心】なぜ「4つ目」が必要なのか? スマホは嘘つき?
理屈では「3つでOK」のはず。でも、ここからが本当の「盲点」でした。
生徒:え、でも先生。さっき「4つ目の衛星」も大事だって言いましたよね? 3つで場所がわかるなら、4つ目はいらないじゃないですか。もう1個球が増えたって、どこに点があるか余計わからなくなるんじゃ……。
先生:ここが一番面白いところなんだ。実は、僕らのスマホは「嘘つき」いや、少しだけせっかちまたはのんびりなんだよ。
生徒:ええっ!?
先生:正確に言うと、スマホの中の時計は「普通の時計」だろ? 衛星の「原子時計」に比べたら、めちゃくちゃズレてるんだ。 GPSの計算は「100万分の1秒」の狂いも許されない。スマホの時計がほんの少しズレているだけで、距離の計算が何百キロも狂っちゃうんだ。
生徒:あ……。じゃあ、3つの衛星で出した「仮の場所」は、実はデタラメってことですか?
先生:その通り。そこで4つ目の衛星が「審判」として登場するんだよ。
生徒:審判?
先生:4つ目の衛星が言うんだ。「もし君がさっきの場所にいるなら、僕の電波は〇秒で届くはずだよ」って。スマホが測ってみて、もし計算が合わなかったら?
生徒:あ! 「僕の時計がズレてるんだ!」って気づけるんだ!
先生:そう! 4つ目の情報があることで、スマホは自分の時計のズレを逆算して、ピタリと原子時計に合わせることができる。 「この場所にいて、かつ時計がこれだけズレている時だけ、4つの衛星の計算が全部ピッタリ合う!」っていう唯一の正解を導き出すんだ。
■まとめ:僕らは宇宙の時計を持ち歩いている
生徒:なるほど……。3つで場所の「候補」を出して、4つ目で「時計のズレ」を直して正解を決める。それで完璧な場所がわかるんだ!
先生:完璧だね。スマホっていう数千円のチップが、宇宙にある数億円の時計と同じ正確さで動けるのは、この4つ目の衛星という「平和主義者」が計算の矛盾を仲直りさせてくれているからなんだよ。
【あとがき】 「フラフープを突き抜ける2点」というイメージが繋がった瞬間の生徒の顔、最高でした。 普段何気なく見ているスマホの「青い丸」。その裏側では、宇宙からの時報を聞きながら、常に「時計のズレ」と戦う数学のドラマが繰り広げられているんですね。

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