理科の勉強をしていて、「これってどういうこと?」と夜も眠れなくなるくらいモヤモヤしたことはありませんか? 今回は、多くの中学受験生が「暗記」で済ませてしまいがちな、だけど突っ込んで考えると大人でも頭がパニックになる「地球と磁石の本当の秘密」について、授業での熱い格闘をそのままお届けします!
伏角50度って、どっちに向かってお辞儀してるの?
生徒:先生!「地球は大きな磁石だから方位磁針のN極が北を指す」とか「北極の近くにはS極がある」っていうのは、塾のテキストにも載ってるし、もう分かりきってる常識です!
先生:おっ、さすが受験生、基本はバッチリだね。
生徒:でも、その先がどうしても納得いかないんです。東京で方位磁針を置くと、北を指しながら、地面に向かって斜め下50度くらいにお辞儀する(伏角)って習うじゃないですか。あの「50度下に突き刺さる磁力線」って、一体どこから来てどこへ行くんですか?
先生:そこに着目するとは鋭いね!実はね、東京の理科室で見ているその50度の傾きは、オーストラリアの南(南半球)の海から宇宙空間へ向かってビューンと飛び出し、赤道の上空を大ジャンプして、はるばる東京の地面に降ってきた「巨大な磁気の架け橋」の終着駅の角度を見ているんだよ。
生徒:ええっ!?宇宙を大ジャンプ!?
先生:そう。赤道の上空では地面と完全に水平だった線が、北半球に来るにつれてカーブを描いて急降下し、東京の地面に「斜め下50度」で突き刺さる。そして地面に入った後、さらにコンパスが指す方向に進むと、磁力線は地面の下へ斜めに入り込みながら、地球の奥深くへと伸びているんだ。実は磁力線は地球の内部と外側をぐるっと一周する大きな輪になっているんだよ。
生徒:なるほど……。あ、ちょっと待って。その「斜め下50度」って、本当の「北極点」に向かってお辞儀してるんですか?
先生:いや、実は違うんだな。東京から磁北極の地点に向けて指を指すと、下向きに約25°なんだ。地球は球の形をしているから地面の下を斜めにさすことになるんだよ。ここがわかりづらいところなんだけど、方位磁針のN極が指す向きと磁北極の方向を指す向きとでは大きく違うんだ。方位磁針の針は、「磁北極という場所」に直接引っ張られているわけでなく、あくまで「今、自分の目の前を流れている磁力線の傾き」にピタッと並ぼうとするんだよ。
ついでに東西方向にもズレがあるよ。磁北極は北極点から東に0.3°くらいズレていて、さらに方位磁針の指す向きは西に約8度くらいずれるんだ。だから、方位磁針は本当の北(北極点)でも、磁北極でもなく、北極点から約8度西にズレた方向(これを『偏角』と言うよ)をまっすぐ見つめたまま、ペコリと50度お辞儀をしているんだよ。しかもその磁北極、じっと止まってなくて、いま現在もロシアの方に向かって1年に数十キロ(50キロ近くになることも!)もの猛スピードで大移動中なんだ。
「磁力線が湧き上がる」のモヤモヤを解剖する
生徒:うーん……。説明のイメージは分かりました。分かりましたけど……やっぱりなんか、まだしっくりいってないんですよね。
先生:お、どのへんがモヤモヤする?
生徒:そもそも「磁力線が上空から降ってくる」とか「湧き上がって地面を這う」っていう表現そのものが、なんか怪しいというか……。そもそも磁力線って何なんですか?本当にそんな「見えない糸」みたいなものが地球のまわりを流れてるんですか?
先生:……素晴らしい!その違和感を持つのは、ものすごく健全で鋭い科学的センスだよ。ハッキリ言おう。現実の宇宙や地球の周りに、「磁力線」という名前の糸や水流が実在して流れているわけではありません!
生徒:ええっ!流れてないの!?
先生:流れてない。磁力線っていうのは、目に見えない磁界(磁気の力)の様子を、人間が理解しやすくするためにノートに書き足した「ただの補助線(デザイン)」に過ぎないんだ。 理科の実験で、棒磁石のまわりに鉄粉をまくと、綺麗なしま模様ができるよね。あの鉄粉の粒は、1つ1つが「超ミニサイズの方位磁針」なんだよ。磁石の力に引っ張られて、その場その場でピタッと特定の方向を向いた結果、並びが繋がって「線」のように見えているだけ。
先生:つまりね、実在する糸がカクッと曲がって地中を這っているわけじゃなくて、「地球が作る磁力の向きが、場所によってグラデーションのように変化している」というのが現実なんだ。 赤道の上空(宇宙)に方位磁針を置くと、針は地面と水平になる。東京の上空へ移動すると、斜め下50度を向く。そのまま東京の理科室まで下ろしてきても斜め50度。でも、もしスコップで地面を掘って、地中深くへ方位磁針を沈めていくと、北極に近づくにつれて、針の向きはだんだん水平(地面と平行)へと滑らかに傾きを変えていく。 この「方位磁針の向きの変化」を1本の線で繋いでみようとすると、結果的にこういうカーブの地図(案内図)にならざるを得ない、ということなんだよ。
生徒:……あ、そうか!実物の水流があるんじゃなくて、そこに方位磁針を置いたときに「針がどっちを向くか」という力の案内図なんだ。それなら、地中に入ってから北極へ向きが変わるのも納得できます!
【大矛盾】ドロドロに溶けた鉄は、磁力を失っているはずじゃ!?
生徒:あ!でも先生、また別のすごい矛盾を見つけちゃいました。
先生:ほう、何だい?
生徒:さっき先生、「地中に入った磁力線は、地球の奥のドロドロに溶けた液体の鉄の影響で、北極へ向かう」って言いましたよね。でも僕、前に理科の授業で聞きました。「磁石は熱すると磁力を失う(キュリー温度)」って。地球の芯にある鉄って、数千度もあってドロドロに溶けてるんですよね?磁力を失ってるはずなのに、なんで地球規模の巨大な磁石になれるんですか!?
先生:……(ニヤリ)。
生徒:あ、先生がニヤニヤしてる。
先生:いや、参ったな。そこは入試でも最難関レベルのひっかけであり、このテーマの一番面白い核心なんだよ。君の言う通り、液体の鉄そのものは、熱すぎて磁石としての力(磁気)を完全に失っています! 100%正しい!
生徒:じゃあ、なんで地球は磁石なんですか!?
先生:地球はね、中に「永久磁石」が埋まっているわけじゃないんだ。内部の熱と自転の力を使って、自給自足で電気を起こし続けている「宇宙に浮かぶ巨大な発電機(電磁石)」なんだよ!これを科学の世界では「ダイナモ理論」って言うんだ。
先生:外核のドロドロの鉄は、磁石の力は失っているけれど、「電気をめちゃくちゃよく通す(電線である)」という性質はそのまま残っている。そして地球が自転でグルグル回ることで、この電線のプールが、地球の回転軸のまわりを円を描くようにぐるぐると回る。これが自然にできた「巨大なコイル(ぐるぐる巻きの電線)」になるんだ。
生徒:あ、コイルだ!中3とか小6の発展でやる、電磁誘導の実験の!
先生:そう!そのコイルに対して、地球の底の激しい熱が「グツグツという沸騰(対流)」を起こす。これによって、ドロドロの鉄が上下に激しく動き回る。これが、実験室でいう「磁石(磁界)の中でコイル(電線)を動かして発電する(自転車のライトの発電機と同じ)」を強制的に作り出しているんだよ。
【最後の壁】最初の磁石はどこから来たの?
生徒:ちょっと待ってください。電磁誘導の実験って、「コイル」のほかに、絶対に「永久磁石」が必要ですよね。地球の中の鉄がコイルなのは分かりました。でも、肝心の「抜き差しするための最初の磁石」はどこにあるんですか?地球の中はみんな熱くて磁力を失ってるんですよね?
先生:うわあ、そこまで気づいちゃったか。素晴らしいロジックだ。実験の手順に忠実に考えると、最初の磁石(キッカケ)がないとおかしいよね。実はね、その最初の磁石は地球の中ではなく、「宇宙空間」にあったんだ。
生徒:宇宙空間!?
先生:そう。地球が誕生した46億年前の宇宙には、近くの星の爆発や太陽からの活動によって、ごくごく微弱な「磁気のノイズ(超かすかな磁石の力)」が最初から漂っていたんだ。方位磁針もピクリとも動かないような、おもちゃにもならないレベルのノイズだけどね。 でも、その「かすかな宇宙の磁気(磁石)」がある中で、地球の自転と熱によって「ドロドロの鉄(コイル)」が猛スピードでぶん回された。すると電磁誘導が起きて、コイルにほんの少しだけ「電流」が流れたんだ。
生徒:あ!コイルに電流が流れたってことは……!
先生:そう、中3の理科の基本だね。「コイルに電流が流れると、そのまわりに新しい磁界(磁石の力)ができる」。ここで地球は、自分自身の力で「電磁石」に変身したんだ!
生徒:でも、最初は「かすかなノイズ」から生まれた弱い電気ですよね? なんでそれが、地球全体を包むようなこんなに強い磁石になれるんですか? 途中でエネルギーが尽きちゃいそうなのに……。
先生:そこには、地球の持つ「止まらない怪物エンジン」が関係している。 一度、地球が自分で電磁石になったら、今度は「さっき自分で作った、最初より強くなった電磁石」の目の前で、ドロドロの鉄が、地球の熱と自転によって、さらにゴリゴリと無理やり動かされることになる。 強い磁石の前で電線を動かすわけだから、電磁誘導のパワーがさらにアップして、もっと「強い電流」が流れるよね。
生徒:……あ!!「磁石が強くなったから、次に動いたときにはもっと強い電気が生まれる」っていう、雪だるま式(相乗効果)だ!
先生:その通り!ウソみたいな本当の無限ループ。地球の奥底にある「熱」と「自転」という強力なエンジンが、外から24時間いつでもエネルギーを注ぎ込んで鉄を動かし続けているから、電気がどんどんパワーアップしていったんだ。そして、電気が強くなることで生まれるブレーキの力と、動かすパワーがガチッと釣り合ったところで、今の地球の磁石の強さでピタッと安定したんだよ。
生徒:す、すごすぎる……!地球の中に大きな棒磁石が埋まってるっていうあの図、大嘘じゃないですか!
先生:ははは、そうだね。あれは分かりやすさ最優先の「記号」に過ぎないんだ。本当の地球は、永久磁石なんて1個もない、「自分自身の熱と自転で電気を起こし、自分で自分を巨大な電磁石にしている、宇宙に浮かぶ大発電機」だったんだね。
生徒:小さな方位磁針の針が斜め下に50度傾いているのって、地球の底でドロドロの鉄が嵐みたいに渦巻いて発電しているエネルギーと、いまリアルタイムに繋がってる証拠だったんだ……。理科って、暗記じゃなくて仕組みが分かるとめちゃくちゃ面白いです!
【塾長より一言】 「地球は大きな磁石」「伏角は50度」という無機質な言葉の裏には、これほどダイナミックな宇宙と地球のドラマが隠されています。 丸暗記の勉強はつまらないけれど、「なぜ?」を突き詰めた先にある「納得の瞬間」は、子供たちの目を裏口から科学の表舞台へと引っ張り出す最高の特効薬になります。 受験生の皆さん、テキストの図解を鵜呑みにせず、ぜひ「本当の仕組み」にワクワクしながら学んでいきましょう!


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